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古書店 一馬書房

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古書店 一馬書房

2017/10/04 17:40

四日目の営業を終え、初日からの緊張の糸が大分解けて参りました。ここ二週間ほど張り詰めたような感じだったので、少しコーヒーを飲みながらまったりとしております笑 お店はいま閑古鳥が鳴いている状態で、四日目にして、やはり甘くはない商売の現状を身に沁みて感じています。少しずつですがいまサイトの方を手入れしたりしています。まだまだ動いていくことが山ほどありますが、長い目で見た時にお客様に気に入って頂けるような古本屋として勉強を続けていきます。

今日は一冊だけですが、芥川の本を入荷致しました。「侏儒の言葉」という本です。この本を私が読んだのは、高校生の頃でした。父の書棚にあった芥川龍之介の新潮文庫のものはいくらか旧いものでした。今流通しているカバーのものではありません。私はその時期、高校生らしくやたらめったらエンタメ作品を乱読していたのですが、妙にその手垢の付いたカバーと使い込まれた小さな本が気になって、書棚から抜き取り、開いてみました。しばらくぱらぱらとめくりながら、読んでいると、そこには全く別の世界が広がっていて驚愕したことをいまでも覚えています。鋭利に研がれた日本刀のような切れ味のある文章と、その美しさは、芥川龍之介という名前とともに私の記憶の中に刻まれました。父に一言告げて、その本を借りました。

それから何年かが経ち、大学生になった頃、色々な事情が重なって東京から実家に帰ったことがありました。人並みかそれ以上には悩んでいたように思います。誰しもそんな時期はあると思うのですけれど。帰ってから偶然、屋根裏の小さなロフトに置かれていたその本を再び見つけました。私は父の本棚に返さずにそれを持っていたのです。本の中のある章に、どうしても脳裏に残ったままの言葉があります。その言葉を読んだときに、思わず眼が開かれるようでした。深い思索に裏打ちされた言葉は飛び込んでくるように自分の前に浮かびました。(その章については商品頁に)。

複刻版の単行本を手にしていた私は、商品を検品するためにいくらか頁を繰っていました。芥川の言葉は、何年経っても変わらぬまま、自ら選んだ人生の路筋と背負うこととなった運命の半分ずつを、強く肯定しようという意志に溢れていました。最期は悲しい結末を選んだ文豪ですが、亡くなるまで原稿を書き続けた彼の姿は、小説家を目指す全ての人にとって英雄のように映ります。

落ち着いた日々の中で、かつての作家達の文章を読んでいるとき、私の望んでいたことはこういうことだったのだということを強く感じます。そんな時間を与えてくれる本を、お届けできるように古本屋を続けていきたいですね。

店主