カンバセイション・ピース 保坂和志著 (文庫本)
「カンバセイション・ピース」保坂和志著 文庫本 新潮文庫 2006 初版 498頁 状態:A(美本)
<梗概・引用>
小説家の私が妻、猫三匹と暮らし始めた東京世田谷にある築五十年の一軒家。友人が経営する社員三人の会社が間借りをし、妻の姪も転がり込んだ。賑やかだがゆったりと流れる日常のなか、お盆にやってくる陽気なイトコたちの昔話や同居人たちとの会話から、かつてそこで暮らした人々の記憶が立ち上る。濃密な時間が流れ、過去と現在がつながり、生と死がともに息づく長編小説。
<店主・コメント>
ごく当たり前の生活、ありふれた日々。しかし、その日常を描かせたら、誰にも右に出る者はいない保坂和志の小説。滔々と流れる穏やかな語り口と、地に足の付いた情景描写。しっかりと現実に深く根を張っているからこそ、時折、保坂さんの小説で語られる意識は誰よりも自由になる。勿論、猫好きの著者ならではの丁寧な猫に対する描写もあり。保坂さんは、猫を人間と対等か、あるいはそれ以上の存在として見るような愛情の深い眼差しで、彼ら、彼女らを描きます。この本の中には私たちの生活がある。変わり映えのないような、何でもない日々も、十二分に物語なのだということが作品を通して伝わってくるようです。