「迷うことについて」レベッカ・ソルニット著 東辻賢治郎訳(単行本)
左右社 2019刊 初版 233頁 帯付き 状態:A(美麗本。小口、天にほとんど目立たないほどの僅かなシミがあります。本文・カバー、いずれも問題なく非常に良好なコンディションです)
<梗概>
ここから先はわたし自身が描いたいくつかの地図だ。ソクラテス、ダ・ヴィンチ、ウルフ、ベンヤミン、ヒッチコックらと<未詳の土地>を旅する思索の書。
ソクラテスはいう。未知を知ることができるのはそれを思い出しているからだ。人は、未知と思えるものをすでに知っている。いわばこういうことだ。あなたはかつてこの場所にいた──そのときは別の誰かだったにすぎない、と。ここでは単に未知なるものの所在が、未知の誰かから未知の自分へ移動しているだけだ。謎だ、とメノンはいう。謎だ、まったく違う意味で、とソクラテスは言う。それだけが確かなこと、そしてそれがひとつの指針となりうるはずだ。
<店主ひとこと>
ノンフィクションの間からフィクションが産まれてくる瞬間を目の当たりにする、濃密な読書体験。
この本をよくよく読んでみると、実はフィクションとノンフィクションの差や分類上の区別なんてほとんど意味を持たないんじゃないかと思えてきます。生き方に悩んでいる方、これからどんな道を辿るべきか分からなくなって、<迷い子>になっている方にぜひおすすめしたい一冊。ほんとうに道に迷ったひとの話がでてきます。
山に入って迷った経験豊富な大人と未だ世界を知らない子どものうち、どちらが助かるか。迷いのうちに留まっていることで道が開けることもあるのだと思えてきます。亡くなった親友の話、チョコレートキャラメルを売りに来る盲人の話など、どこからともなく話される個人的な挿話、その語り口に魅力があります。こんな本があるなら、現代文学もまだまだ捨てたものではないなと思います。