『猫町　他十七篇』萩原朔太郎著　清岡卓行編　文庫本　岩波文庫　1995刊　重版　163頁　定価460円（＋税）　状態：B＋（古本として良好）

＜梗概・引用＞
　東京から北越の温泉に出かけた「私」はふとしたことから、「繁華な美しい町」に足を踏み入れる。すると、そこに突如人間の姿をした猫の大集団が……。詩集『青猫』の感性と詩情をもって書かれたこの「猫町」(1935)をはじめ、幻想風の短編、散文詩、随筆18篇を収録。前衛詩人としての朔太郎(1886-1942)の面目が遺憾なく発揮された小品集。

＜店主ひとこと＞
　詩人・萩原朔太郎の数少ない小説作品を収録。表題作『猫町」は歩いている方角が分からなくなってしまった主人公が、何もかもが逆転してしまった世界の中へ、露とも知らぬ間に足を踏み入れ、やがて奇妙な感覚をもたらす町へと辿り着くお話。幻術的な朔太郎のイマジネーションによる文章は、思わず白昼夢を見ているような気分を、読む者に与えます。その感覚は彼独自のもので、まるで詩人しか知らぬ真実が、この世にあるのだということを、はっきり感じさせる魅惑的な作品集。彼にもっと小説を遺して欲しかった。おすすめ。