文章讀本 谷崎潤一郎著 (文庫本)
「文章讀本」谷崎潤一郎著 文庫本 中公文庫 2014年改版 重版 236頁 状態:B’(良好)
<著者・略歴>
谷崎潤一郎(1886-1965)
明治十九年、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風らに激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『細雪』など、豊穣な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩み続け、昭和四十年七月没。
<裏書・引用>
われわれの国語には一つ見逃すことの出来ない特色があります。それは何かと申しますと、日本語は言葉の数が少なく、語彙が貧弱であると云う欠点を有するにも拘わらず、己れを卑下し、人を敬う云い方だけは、実に驚くほど種類が豊富でありまして、どこの国語に比べましても、遙かに複雑な発達を遂げております。
<店主・コメント>
谷崎潤一郎の文章手解きの本。本人から直接講義を受けるような講義録のような形式で記述されたこの文章は谷崎の小説に対する文章観を分かりやすく表しています。小説のような散文において、藝術と実用の文章に区別はないとする観点に立ち、ひとに伝わる文章というものは、言葉や文字で表現出来ることと出来ないことの限界を知り、その限界内に踏みとどまって書くということが美文の要件である、という主張がなされています。文章について分かっているようで、実は全く理解していないことを、この本はひとつひとつ解きほぐして私たち読者の前に示してくれます。