「侏儒の言葉」芥川龍之介著（複刻版）日本近代文学館（昭和５１年刊）　重版　220頁　内函あり　状態：B（並　内函背表紙にヤケ、キズあり。本文良好）

　＜店主・コメント＞
　芥川龍之介の思想の”蔓草”を現代まで伝える書。各頁に刻まれた短い言葉、その端々にはただならぬ思索の跡が窺えながらも、人間芥川としての暖かい息吹も感じられます。この本の中に「人生――石黒定一君へ」という章が収められていますが、私の最も好きな文章です。人生というものを、オリンピック大会の競技場に喩えて、悩めるひとへ対して強烈なメッセージを送ります。以下、引用。

　「人生は狂人の主催に成ったオリンピック大会に似たものである。我々は人生と闘いながら、人生と闘うことを学ばねばならぬ。こう云うゲームの莫迦莫迦しさに憤慨を禁じ得ないものはさっさと埒外に歩み去るが好い。自殺も亦確かに一便法である。しかし人生の競技場に踏み止まりたいと思うものは創痍を恐れずに闘わなければならぬ。」（芥川龍之介「侏儒の言葉」・現代言葉で表記）

　執筆のお守りに、本棚の手に取れる場所に芥川の本を置くのはいかがでしょうか。きっといつかあなたを助けてくれますよ。