「本を書く」アニー・ディラード著 柳沢由実子訳(単行本)
田畑書店 205頁 2022刊 初版 帯付き 状態:A(美麗本。本文・小口・天地・カバー、いずれも問題は見受けられません。帯付きの初版本です)
<梗概>
《書く生活》のバイブル、ついに復刊。ものを書こうとしているすべての人へ。
「ものを書く」ことの隠喩でもあるかのように、ときになんでもない、あるときは非凡な人たちの話が、小さい叙事詩のように織り込まれる。(須賀敦子・朝日新聞書評)
本書はいつも、読み返したい本のリストの中にある。(山田稔)
アニー・ディラードの選び抜かれた刃物のように鋭利で、思索的で、格調高い文章を読んでいるうちに僕は錯覚する。作家とは、書く人間とは厳格で、思慮に富み、禁欲的でなければならないのか。それは一種の知的労働者が陥るスノビズムなのではないのか。
だが、本書を読み進めていくうちに分かる。書くことのテクニカルな喜びほど虚しいものはない。書くことはむしろ動物的で、感覚的な行為である。そして言葉の中に自己が溶け込み、自己を没するほど集中したものだけが辿り着ける、書くことの境地がある。
それはテクニックやトリックやまやかしではない。世界の絶対的な真理を純粋に捉え、正確に世界を見た者だけが書くことができる言葉があるのだということだ。(BOOKNERD店主・早坂大輔)
<店主ひとこと>
ものを書く人に勧める本のリストを作るとしたら、この本は絶対にリストに入れたいと思う一冊です。アニー・ディラードはピュリッツアー賞を受賞した米国の作家です。
この本はものの書き方を教えてくれる本ではありません。しかし、アニーはものを書く生活とはいったいどういうものか、僕たちにありありと、惜しげもなく示してくれます。作家は頭の中だけで文章を組み上げるわけではなく、街中を歩く人々と同じように息を吸い、試行錯誤の日々の中を生きていて、手探りでペンを動かしながら、言葉をつかまえるのだということを。
書斎の小屋へとつづく道で鳥のさえずりに耳を傾け、執筆で更けた夜にブラインドの間から花火を眺め、ときに薪を割って汗をながしながら、彼女はきっと書いたのだろうと思います。