『ハーメルンの笛吹男 伝説とその世界』阿部謹也著(文庫本)
筑摩書房(ちくま文庫) 1988刊 重版 315頁 状態:B+(古本として良好なコンディション。カバーにスレは見られますが、本文・小口・天地、とても綺麗な保存状態です)
<梗概>
《ハーメルンの笛吹男》伝説はどうして生まれたのか。十三世紀ドイツの小さな町で起こったひとつの事件の謎を、当時のハーメルンの人々の生活を手掛かりに解明。これまで歴史学が触れてこなかったヨーロッパ中世社会の差別の問題を明らかにし、ヨーロッパ中世の人々の心的構造の核にあるものに迫る。新しい社会史を確立するきっかけとなった記念碑的作品。解説、石牟田道子。
<店主ひとこと>
世の中の伝承の中には、普通に生活していては決して出会うことのない、心惹かれる謎があったりしますね。ドイツ伝承で有名な『ハーメルンの笛吹男』、一度くらいは名前を聞いたことがあるんじゃないでしょうか。ある日、何処からともなく笛を吹く芸人風の派手な衣装を着た男が現れて、その謎の男の笛につられて子供たちが町中から一夜にしていなくなってしまったという話。それを小説のモチーフとして使うために読んだのですが、この本は歴史の史実の方から真実に肉迫していこうとする、ノンフィクションの史実ミステリという感じで、読み応えがありました。こういった伝承が物語として残るには、それだけの背景が当時の現実の方にもあるのだということに気づく本です。