『瓦経』日和聡子著 金井田英津子画 (単行本)
『瓦経』日和聡子著 金井田英津子画 (単行本) 岩波書店(coffee books) 2009年刊 初版 78頁 状態:A(美麗本。帯付き。カバー装丁・小口・天地・中身をすべて確認しました。いずれも問題なく、保存状態の非常に良いお品ものです。)
<帯文>
もうすぐ日が暮れる。闇が来ればきっと迷う。
作為無作為の混濁に、彷徨い、眠り、目覚め、落ちる、掌編六編。
coffee books: 文学とビジュアルが切り結ぶ、おとなたちへの贈り物。
<著者・画家>
著者・日和聡子
1974年島根県生まれ。詩集『びるま』で中原中也賞(2001年度)受賞。詩集に『唐子木』『風土記』『虚仮の一念』、小説に『火の旅』『おのごろじま』
画家・金井田英津子
1955年生まれ、版画家。国内外で作品を発表するかたわら、本の装丁・装画を手がける。萩原朔太郎『猫町』、内田百閒『冥途』など。長谷川摂子『人形の旅立ち』の挿絵で第十八回赤い鳥さし絵賞(2004年)受賞。
<店主ひとこと>
この本は、一年ほど前の一箱古本市の会場で見つけたものです。この作家・詩人さんについてはまったく知らないで背表紙に手を伸ばしたのですが、ぱらぱらと頁を繰ってみて、何となく惹かれるものがあったので、店主さんに小銭を手渡して、本を譲り受けました。それから何の前知識もないままにこの本を開いて読みました。文体は古風で、取っつきにくいように思われることもあるのですが、行を読めば読むほど、自分の足場が失われるような、不思議な感覚に陥っていく、味わい深い文章でした。もし詩人が小説を書いたらこんな風に書くのだろう、と思わず想像してしまうような。物語の『私』にまるごと視点と感覚を持って行かれてしまう、それも静かに静かに、気づかないうちに。物語にぴったりと合った装画もお見事という他ありません。私個人としては、『放生』に出てくる人物に『敷島』と名付けるセンスが素晴らしいなと感じました。答えは、この本を読んで確かめてください。